ニュース番組がイベントをやる時代

text by 赤様

先日、あるイベントに行ってきた。
日曜夕方の六本木ヒルズ。

なにやら楽しいイベントのように思えるが、
これがなんとニュース番組のイベントなのだ。

そもそもニュース番組がイベントをすることすらおかしな話しだが、
それがNHKの番組なのだから、とても不可思議なことだ。

この番組は、NEWSWEBといって、
NHKで月曜から金曜の夜に放送されているニュース番組だ。
僕はこのところ、これにハマっている。
というのも、今までにないタイプのニュース番組だと思っているからだ。

よくニュースの新番組が始まるときに、
「わかりやすさ」とか、「今までにない」という言葉で、
差別化を強調して視聴者を獲得しようとするが、
見てみるとあまり特徴がないことが多い。

池上彰がバラエティ番組に出るようになって、
時事問題に対する敷居を下げたのは凄いことだと思う。
時事をテーマにした内容でも、
民放のゴールデンタイムで番組が成り立つのは、
民意の変化のひとつだと思う。

でも、選挙の投票率が低いのに、
ニュース番組への関心が高いということは到底考えられないので、
あの手この手を、まだまだ考えなければいけないのだろう。

このNEWSWEBは始まって1年4か月になるが、
他番組とは大きく違うところがある。
それは、「ナビゲーターが同席すること」と、
「画面にずっとツイートが流れること」だろう。

ニュースを読むアナウンサーのほかに、
ナビゲーターと呼ばれる人が各曜日ごとに同席する。
このナビゲーターは、各方面で活躍する30代くらいの人物で、
学者、ジャーナリスト、働き方のコンサルタント、
インタビュアー、コミュニティデザイナーなど、
それぞれが本職を持っている。

近年、社会企業家やソーシャルワーカーなど、様々な新しい分野で活躍する若者が、
ニコニコ動画や、nottvなどの新しいメディアに登場する機会が増えている。

彼らは、今までにない社会の流れ(しくみ)や考え方を生み出し、
社会の新たな潮流になっている。
「ノマド」という働き方もこうしたところから生まれているが、
そんな勢いがあって、現場に近く実感で語れる人が、
ナビゲーターに多く起用されている。

そういう彼らだから語れる言葉が新鮮だし、
ニュース番組独特の硬い空気を、
わざと壊そうとするナビゲーターもいるところも面白さのひとつだ。

掘り下げるニュースを説明してもらうために、
他のニュース番組と同じように、大学教授などの専門家を招くが、
そんなナビゲーターが視聴者に近い目線で、
素朴な疑問をどんどんぶつけていく。

掘り下げるニュースはWebなどで事前に告知され、
質問をツイートで募集するのだが、
アナウンサーやナビゲーターが、
そのときの話しの流れに適したツイートを選び、
視聴者の意見として、これも専門家に質問したりもするので、
テレビの前に居ながら質問できるなんてことも可能になる。

そして時には、
他局よりも公正中立を目指すNHKとして、
立場上あまり深入りできないことも、
視聴者から「こんなツイートが来ている」と、そのツイートを利用して、
民法よりも突っ込んだ議論に発展し、
とてもNHKとは思えないテンションになったりもする。

このツイートは、放送中は終始、画面に流れる仕組みになっている。
ツイートが画面に流れること自体、
もうすでに他の番組でもやっていることだが、
出演者に対する意見や、ニュースへの素直な感情などもタイムリーに流れるので、
ニコニコ動画の画面に流れる文字や、ラジオでハガキが読まれるような感覚があり、
親しみやすさを感じるところもいい。

冒頭に紹介したイベントは、
番組をより良いものにするにはどうしたらいいか、という趣旨で、
アナウンサー、ナビゲーター、ディレクター、
そして視聴者とともに、実に4時間もの間、議論を交わすという
前代未聞のイベントだった。
ディレクター曰く「NHKらしさを壊したい」という意志は、
そんなところにも現れていると言える。

ニュース番組がイベントをやる時代。
社会のしくみがどんどん変わっていく昨今、
僕らは、この社会をどう見て、どう考えて、どう生きていくか。
そんな考える時代に突入したということを、
この番組は示しているように僕は思う。

カテゴリ

月別 アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 5.14-ja
白黒写真カラー化サービス Coloriko - カラリコ -

このブログ記事について

このページは、cmemberが2013年7月26日 09:00に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「上野満喫」です。

次のブログ記事は「夏の飲み物」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。