羽生選手の演技は美談ではない

text by 赤様

土曜日の羽生選手の演技が話題になっている。

フィギュアスケートの国際大会で、
羽生選手は直前の練習で負傷したにもかかわらず演技をした。
身体もそうだが、何より脳へのダメージが心配された。
メディアではあまり大きく扱われなかったが、
SNSでは大騒ぎになった。

ファンの意見は「あんな状態でも演技をして感動した」
という賞賛の意見が目立った。
一方、他の選手やコーチなどのスポーツ関係者や医療現場からは、
「なぜ止めさせなかったのか」と否定的な意見が多数を占めた。

彼は数分間、氷の上に倒れたままで、
係員の手を借りなければ立ち上がれないほどだった。

脳震盪だとすると、
選手生命だけでなく、人生にまで影響を及ぼすこともある。
これがアメリカであれば、
強制棄権かそれ相当判断がなされるのだそうだ。

脳震盪から正気にもどるまでは人間は植物状態である、
という研究発表もあり、
NFL(アメリカンフットボールのプロリーグ)は、
引退した多くの元選手から脳震盪の後遺症で訴えられている、
という報道もある。

また、セカンドインパクトというらしいが、
脳震盪の状態でもう一度ダメージを食らうと、
これはもう致命的なのだそうだ。

幸い大事には至らなかったが、
これは、そんな状態が懸念されるほど危うい出来事だった。

彼も金メダルを獲るほどの選手だから、
そんな状態でも演技するほどの精神力があるのは理解できる。
その彼の心の強さには、僕も拍手を贈りたい。

でも、少なくともマスコミは、
それを賞賛するだけではなく、
同時に、こんな危険もあるのだと告知すべきではなかったか。

このようなことは、トップアスリートの試合だけでなく、
少年野球や地域の運動会でも起きうるのだ。
何よりも、一般の子どもたちが、
同じような状況になった場合が心配だ。
「あのとき羽生選手は演技をしたんだから」
という雰囲気になってしまうのが最も怖い。

彼は影響力のあるトップ選手。
それを考えると、症状の大小にかかわらず、
彼は演技を回避すべきだったと僕は考える。

そして、日本のスポーツ界は、
その発展や東京オリンピックへの選手育成を謳う前に、
このようなガイドラインを、
すべてのスポーツ現場で早急に定めるべきである。

判断が難しい場合は迷わず棄権させ、
たとえ症状が軽くても、
大事に至らずに良かったと考えるべきだと思うのだが、
いかがだろうか。

どんなタイトルや目標よりも、
人生、生命のほうが大事なのだから。

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このページは、cmemberが2014年11月14日 08:39に書いたブログ記事です。

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